糖尿病って何なんだ! パート3
- 2025年6月4日
- 糖尿病
こんにちは。院長の松尾です。
今回は「運動療法」「体重を減らす際の注意点」「目標体重や“血糖の質”」についてお話しします。糖尿病の評価は、HbA1cや血糖値だけでは不十分です。血糖値の“動き”や“上がり下がり”といった変動にも注意を払う必要があります。今回は、そうした少し踏み込んだポイントについても解説します。一緒に学んでいきましょう!
スライド1:運動療法は糖尿病治療の基本です。ウォーキングや水泳などの有酸素運動を週3回以上、20〜30分続けることが目安です。無理なく、楽しく「続けられること」が大切です。基礎代謝を高め、血糖コントロールをサポートします。
スライド2:体重を減らす方法は「摂取カロリーを減らす」か「消費カロリーを増やす」の2つだけ。バナナでもヨガでも方法は自由で、続けることが何より大切です。他人と比べず、過去の自分と比べて少しずつ改善を目指しましょう。
スライド3:目標体重の目安は「BMI 22」とされています。これは最も健康的とされる標準体重です。身長(m)×身長(m)×22で計算できます。やせすぎ・太りすぎを避け、健康的な体重を目指しましょう。
スライド4:標準体重を大きく下回ったり上回ったりすると、死亡率が高くなることがわかっています。肥満は心疾患や糖尿病のリスクを、やせすぎは免疫低下や骨粗しょう症のリスクを高めます。健康長寿には「標準体重」が鍵です。
スライド5:高齢者の目標体重は必ずしも「標準体重」にこだわる必要はありません。適度な脂肪があることで免疫力が保たれ、低栄養や転倒リスクを減らすとされています。BMIは22〜25程度が適正と考えられています。
スライド6:高齢者がやせすぎると筋力が低下し、寝たきりや骨折のリスクが高まります。体重はただ減らせば良いわけではなく、健康を保つためにはある程度の筋肉と体重が必要です。
スライド7:高齢者にとって適度な体重は、エネルギーの蓄えとしても大切です。病気や手術のとき、体力を維持し回復を支える役割を果たします。やせすぎず、しっかり備えておくことが安心につながります。
スライド8:一般的に肥満は生活習慣病のリスクを高めますが、高齢者ではやや肥満気味の方が死亡率が低いという研究結果もあります。年齢によって「ちょうどいい体重」の考え方も変わるということです。
スライド9:HbA1cは、血糖値の平均を表す指標で、高いと合併症のリスクが上がります。目標値は人によって異なりますが、一般的には7%未満が目標とされます。体調や年齢によって柔軟に調整することが大切です。
スライド10:高齢で元気がない方や、認知機能の低下がある方、低血糖リスクが高い方などは、HbA1cの目標値を個別に調整する必要があります。全ての人に一律で7%未満を目指すのではなく、主治医と相談しながら適切な目標を設定しましょう。
スライド11:HbA1cは過去2〜3か月の平均血糖を示しますが、低血糖が多いと低く出ることもあり、HbA1cだけでは正確な血糖コントロールはわかりません。質のよい血糖管理のためには、日々の血糖測定や持続血糖測定器の活用が重要です。
スライド12:どちらの血糖グラフもHbA1cは同じ「7%」ですが、血糖の変動幅が大きく異なります。平均値が同じでも、血糖の安定度=“質のよい血糖管理”は大きく差が出ることがわかります。日々の血糖の動きを見ることが大切です。
スライド13:上のグラフは血糖が安定しており、下のグラフは大きく変動しています。どちらもHbA1cは7%ですが、血糖管理の「質」が全く異なります。HbA1cの数字だけでなく、血糖のゆらぎにも注目することが大切です。
スライド14:糖尿病による神経障害は、発症から4〜5年で現れることが多く、足先のしびれが典型的な症状です。他にも、便秘や胃の不調、立ちくらみ、EDなど多様な症状が現れます。毎日の足のチェックや、必要に応じてフットケアを取り入れることが大切です。
スライド15:糖尿病網膜症は、目の奥の網膜に障害が起こる合併症で、初期は自覚症状がないことが多く、進行すると視力低下や失明のリスクもあります。白内障・緑内障も糖尿病と関連しており、定期的な眼科検査がとても重要です。
スライド16:糖尿病腎症は、初期には自覚症状がほとんどありませんが、進行すると腎機能が低下し、最終的には透析が必要になることもあります。尿中アルブミン(たんぱく)の増加がサインです。早期発見・早期治療で進行を防ぐことが可能なので、定期的な尿検査・血液検査が重要です。
スライド17:糖尿病による腎症を早期に発見するためには、以下の項目が重要です:
①尿アルブミン指数は初期のサインになります。
②尿たんぱくの有無もチェックポイント。
③血液検査(クレアチニン・eGFR)で腎機能を評価します。
早期に気づき、適切に対応することが腎症の進行予防につながります。
スライド18:糖尿病の治療では血糖の管理が基本ですが、それだけでは不十分です。血圧と脂質(コレステロールや中性脂肪)の管理も非常に大切です。これらをあわせてコントロールすることで、心臓病や脳卒中などの合併症予防につながります。
スライド19:糖尿病性腎症で尿たんぱくがある場合、血圧管理はとても重要です。目標は自宅血圧で125/75mmHg未満。減塩(1日6g未満)も大切です。腎臓を守る薬として、ARB・ACE阻害薬・MRAなどが使われます。
スライド20:糖尿病患者さんにおける悪玉コレステロール(LDL-C)管理はとても重要です。
・一般的な糖尿病の方は LDL-C 120 mg/dL 未満
・動脈硬化リスクが高い方は 100 mg/dL 未満
・心筋梗塞や脳梗塞の既往がある方は 70 mg/dL 未満 が目標です。
リスクに応じて、きめ細かい脂質管理が必要です。
スライド21:血糖管理だけでなく、定期的な健診や合併症のチェックも大切です。眼科・尿検査を含む診察は最低限の健康管理。可能であれば、胃カメラ・大腸カメラ・腹部エコーなどのがん検診も受けましょう。予防が何よりの治療です。
糖尿病といっても、「血糖値だけ」を見て治療しているだけでは不十分なことがあります。
一人ひとりの状態に応じたきめ細かな対応を行うことで、合併症を予防し、健康寿命を延ばすことが可能です。
不安なことや気になることがあれば、いつでもスタッフまでご相談ください。
次回は「糖尿病治療薬の作用・注意点」や「人生会議(ACP)」についてお話する予定です。
芦屋まつおクリニック 院長 松尾俊宏