人は最期、どのように亡くなっていくのか 〜医師が見てきた「自然な最期」〜
- 2026年8月4日
- お知らせ
みなさん、こんにちは。阪急芦屋川駅前の内科・糖尿病内科「芦屋まつおクリニック」、院長:松尾俊宏(まつおとしひろ)です。
このコラムコーナーでは、私の専門分野である糖尿病や内分泌代謝疾患、肥満症、そして訪問診療や終末期医療などについて、患者さんのお役に立てる情報を発信していきたいと考えています。
はじめに
人は誰でも、いつか人生の最期を迎えます。
しかし、「最期のときに体はどう変化するのか」「どのような時間を過ごすことになるのか」について、詳しく知る機会はあまり多くありません。
ご家族が重い病気になったとき、あるいは通院が難しくなり自宅で療養することを考えたとき、多くの方が「最期はどのように迎えるのだろう」と不安を感じます。
医療の現場では、患者さんが人生の最終段階を迎える場面に立ち会うことがあります。その中で感じるのは、人が亡くなる過程には、ある程度共通した身体の変化や心理的な変化が見られるということです。
こうした変化を知っておくことで、ご本人やご家族が過度に不安になることなく、落ち着いてその時間を過ごすことにつながります。
今回のコラムでは、人生の最終段階で起こる身体の変化や心理的な変化、看取りについて、訪問診療の現場の視点からわかりやすく解説していきたいと思います。
【亡くなる前に見られる身体的な変化】
人生の最終段階では、体にさまざまな変化が現れます。ここでは、医療現場でよく見られる代表的な変化を紹介します。
<食事量や水分摂取の減少>
最も多く見られる変化の一つが、食欲の低下です。
体の機能が弱くなると、消化や代謝の能力も低下します。そのため、食べ物を受け付けなくなり、食事量や水分摂取量が少なくなります。
ご家族の中には、「食べないと体力が落ちるのでは」と心配される方も多いですが、人生の最終段階では、体が自然に必要とするエネルギー量も減っていきます。
無理に食べさせることよりも、本人が口にできるものを少量でも楽しめるようにすることが大切です。
<睡眠時間の増加>
亡くなる前には、眠っている時間が長くなることがあります。
これは体力の低下による自然な変化であり、体が休息を必要としている状態です。
呼びかけに対する反応が弱くなることもありますが、完全に意識がないとは限りません。声をかけることで安心感を与えることができる場合もあります。
<呼吸の変化>
最期が近づくと、呼吸のリズムが変化することがあります。例えば、
・呼吸が浅くなる
・呼吸の間隔が長くなる
・不規則な呼吸になる
といった変化が見られることがあります。
また、「ゼーゼー」「ゴロゴロ」といった音が聞こえることもあります。
これは喉に分泌物がたまることで起こる現象で、医療的にケアすることで症状を和らげることができます。
手足の冷えや血圧の低下循環機能が弱くなることで、手足が冷たくなったり、血圧が低下したりすることがあります。これは体の中心に血液を集めるための自然な反応と考えられています。
【最期の段階で起こる心理的な変化】
身体の変化だけでなく、心理的・精神的な変化も見られることがあります。
<過去を振り返る時間が増える>
人生の終盤になると、自分の人生を振り返る時間が増える方が多く見られます。例えば、
・昔の出来事を思い出す
・家族との思い出を語る
・大切な人の名前を呼ぶ
こうした行動は、人生の整理をしている過程とも考えられています。
<大切な人に会いたいという気持ち>
最期が近づくと、家族や親しい人に会いたいという気持ちが強くなることがあります。
訪問診療の現場でも、「家族に会えて安心した」という言葉を残される患者さんは少なくありません。
そのため、可能な範囲で家族がそばにいることは、患者さんにとって大きな安心につながります。
【最期を迎える場所 〜理想と現実 〜】
「人生の最期はどこで迎えたいですか」という質問に対し、多くの方が「自宅で過ごしたい」と答えます。 しかし現実には、病院で亡くなる方が多いのも事実です。
その理由としては、
・家族の介護負担への不安
・医療体制への不安
・急変時の対応への不安
などが挙げられます。
しかし、訪問診療や訪問看護などの在宅医療が整っている地域では、自宅で最期を迎える選択肢も現実的なものになっています。
訪問診療では、医師が定期的に自宅を訪問し、患者さんの状態を確認しながら療養生活を支えます。また、訪問看護や介護サービスと連携しながら、患者さんとご家族を支える体制が整えられます。
【看取りとは何か】
「看取り」とは、患者さんの人生の最終段階を見守り、その人らしい最期を迎えられるよう支えることを指します。
看取りは、医療だけで行われるものではありません。
家族、医療スタッフ、介護スタッフなど、さまざまな人が関わりながら患者さんを支えます。大切なのは、患者さんがどのような最期を望んでいるのかを尊重することです。例えば、
・自宅で過ごしたい
・痛みをできるだけ抑えたい
・家族と一緒に過ごしたい
こうした希望を尊重しながら、医療やケアを提供していきます。
【家族が考えておきたいこと】
ご家族にとって、最期の時間はとても大切なものです。しかし同時に、判断を求められる場面もあります。例えば、
・どのような治療を望むのか
・延命治療を行うのか
・最期をどこで迎えるのか
これらは簡単に答えが出る問題ではありません。
大切なのは、元気なうちから家族で話し合っておくことです。
患者さん本人の希望を知っておくことで、最終段階の医療やケアを選択しやすくなります。
【訪問診療で支える「その人らしい最期」 】
当院では、通院が困難な患者さんが自宅で安心して療養できるよう、訪問診療を行っています。
院長である私は、
・日本糖尿病学会 糖尿病専門医
・日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医
・日本内科学会 総合内科専門医
として、内科疾患を中心に幅広い診療を行っています。
また、訪問看護や介護サービスと連携しながら、患者さんとご家族の生活を支える体制を整えています。
【最期の時間を穏やかに過ごすために】
人が亡くなる過程は決して特別なものではなく、体が自然に生命活動を終えていく過程とも言えます。
その時間をどこで、どのように過ごすかは、人それぞれです。
もし、
・通院が難しくなってきた
・自宅で療養したい
・在宅医療について相談したい
といったお悩みがある場合は、どうぞお気軽に芦屋まつおクリニックまでご相談ください。
患者さんとご家族が安心して過ごせる時間を支えること。それが訪問診療の大切な役割です。
