無理なく続けるための肥満症の食事療法 〜糖質・脂質との上手な付き合い方〜
- 2026年6月4日
- 肥満症
みなさん、こんにちは。阪急芦屋川駅前の内科・糖尿病内科「芦屋まつおクリニック」、院長:松尾俊宏(まつおとしひろ)です。
このコラムコーナーでは、私の専門分野である糖尿病や内分泌代謝疾患、肥満症、そして訪問診療や終末期医療などについて、患者さんのお役に立てる情報を発信していきたいと考えています。
はじめに
「ダイエットをしても長続きしない」「糖質や脂質はできるだけ摂らない方がいいの?」
肥満に悩む方の多くが、こうした疑問や不安を抱えています。
近年、糖質制限や脂質制限など、さまざまなダイエット方法が話題になっています。
しかし、極端な食事制限は長続きしないだけでなく、健康を損なう可能性もあります。
肥満症の治療において大切なのは、「特定の栄養素を極端に避けること」ではなく、糖質や脂質の役割を正しく理解し、バランスよく摂取することです。
今回のコラムでは、肥満症の基本的な考え方から、糖質・脂質の体内での役割、摂りすぎによる影響、そして無理なく続けるための食事療法についてわかりやすく解説していきたいと思います。
【肥満症とは? 単なる体重増加とは違う「治療が必要な状態」】
まず理解しておきたいのが、「肥満」と「肥満症」の違いです。
医学的には、体格を表す指標として「BMI(Body Mass Index)」が用いられます。
BMIは次の式で計算されます。
BMI=体重(kg)÷身長(m)²
日本では一般的に、BMI25以上:肥満 とされています。
しかし、肥満であっても必ずしも病気とは限りません。
肥満に加えて、以下のような健康障害がある場合に「肥満症」と診断されます。
例えば次のような病気です。
・2型糖尿病
・高血圧
・脂質異常症
・脂肪肝
・睡眠時無呼吸症候群
・変形性膝関節症
つまり肥満症とは、肥満によって健康に悪影響が出ている状態を指します。
そのため、単なるダイエットではなく、医療的な管理のもとでの治療が重要になります。
【糖質とは? 体にとって欠かせないエネルギー源】
糖質は、炭水化物に含まれる栄養素の一つで、体にとって最も重要なエネルギー源です。
主に以下のような食品に多く含まれています。
・ご飯
・パン
・麺類
・じゃがいも
・果物
・砂糖
<糖質の体内での役割>
糖質は消化されるとブドウ糖となり、血液を通じて全身に運ばれます。
そして、次のような重要な役割を担っています。
・脳のエネルギー源になる
・筋肉を動かすエネルギーになる
・体温維持に関わる
特に脳は、ほぼブドウ糖のみをエネルギーとして利用するため、糖質は生命維持に欠かせない栄養素といえます。
<糖質を摂りすぎるとどうなる?>
糖質を摂取すると血糖値が上昇し、それを下げるためにインスリンというホルモンが分泌されます。しかし、糖質を過剰に摂取すると次のような状態が起こります。
・余った糖が脂肪として蓄積される
・血糖値の乱高下が起こる
・インスリンが効きにくくなる
これが続くと、
・肥満
・2型糖尿病
・脂肪肝
などのリスクが高まります。
つまり糖質は「悪い栄養素」ではなく、摂り方が重要な栄養素なのです。
【脂質とは? 体を守る重要な栄養素】
脂質というと「太る原因」というイメージを持つ方が多いかもしれません。
しかし脂質もまた、体にとって欠かせない栄養素です。
脂質は主に以下の食品に含まれます。
・肉類
・魚
・バター
・マヨネーズ
・ナッツ類
・食用油
<脂質の体内での役割>
脂質は体内でさまざまな重要な役割を担っています。例えば、
・エネルギー源になる
・細胞膜を構成する
・ホルモンの材料になる
・脂溶性ビタミンの吸収を助ける
といった働きがあります。
特に、体の細胞は脂質を材料にして作られているため、脂質を完全に避けることは健康上望ましくありません。
<脂質を摂りすぎるとどうなる?>
脂質は1gあたり9kcalと、糖質やタンパク質(4kcal)の約2倍以上のエネルギーを持っています。そのため、摂取量が多くなると次のような問題が起こりやすくなります。
・体脂肪の増加
・脂質異常症
・動脈硬化
・心筋梗塞や脳卒中
特に揚げ物や加工食品に含まれる脂質は摂取量が増えやすいため、注意が必要です。
【食事療法のケーススタディ】
肥満症の食事療法は、患者さんの生活習慣によってアプローチが変わります。ここでは、よくあるケースを3つ紹介します。
<ケース1:外食中心の会社員>
40代男性、デスクワーク中心。
昼食はラーメンや丼物などの外食が多く、夕食も遅い時間に食べることが多いケースです。
この場合は、
・麺類や丼物を単品で食べない
・サラダやスープを先に食べる
・夜遅い食事は量を減らす
といった工夫から始めます。
例えば、ラーメン単品ではなく「定食形式」にして野菜を増やすだけでも、血糖値の上昇を抑える効果が期待できます。
<ケース2:間食が多いケース>
30代女性で、仕事中や家事の合間についお菓子を食べてしまうケースです。
この場合は、いきなり間食をやめるのではなく、
・ナッツ
・ヨーグルト
・チーズ
など、血糖値が急上昇しにくい食品に置き換えていきます。
間食を完全に禁止するとストレスが強くなるため、量と質を調整することがポイントです。
<ケース3:夕食量が多いケース>
50代男性で、朝食はほとんど食べず、夕食に大量に食べるケースです。
この場合は、
・朝食を少量でも摂る
・昼食をしっかり食べる
・夕食は控えめにする
というように、食事の時間配分を整えることが重要になります。
【糖質・脂質とうまく付き合うためのポイント】
肥満症の食事療法では、「糖質を完全に抜く」「脂質をゼロにする」といった極端な方法は長続きしません。大切なのは、糖質や脂質を適切な量で上手に取り入れることです。そのためのポイントをいくつか紹介します。
まず重要なのは、主食の量を適切に調整することです。ご飯やパンなどの主食はエネルギー源として必要ですが、量が多すぎると糖質の過剰摂取になります。例えば、ご飯の量を少し減らし、その代わりに野菜やタンパク質を増やすことで、満足感を保ちながら摂取エネルギーを抑えることができます。
次に意識したいのが、食事の順番です。野菜や汁物を先に食べることで、血糖値の急上昇を抑えることができます。これは「ベジファースト」と呼ばれ、肥満や糖尿病の予防に有効とされています。
また、脂質については、脂の質を意識することも重要です。揚げ物や加工食品の脂質を減らし、魚やナッツに含まれる良質な脂質を取り入れることで、健康的な食事に近づきます。
さらに、極端な食事制限を避けることも大切です。急激に体重を減らそうとすると、体はエネルギーを蓄えやすい状態になり、リバウンドの原因になります。
無理のない食事改善を継続することが、肥満症治療では最も重要です。
【専門的なサポートで無理のない食事療法を】
肥満症の食事療法は、単なるダイエットとは異なり、医学的な知識に基づいた管理が必要です。 当院では、
・日本糖尿病学会 糖尿病専門医
・日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医
・日本内科学会 総合内科専門医
の資格を持つ院長の私が診療を担当し、肥満症や生活習慣病の治療を行っています。
また、管理栄養士による栄養指導を実施しており、患者さんの生活スタイルに合わせた具体的な食事アドバイスを行っています。
私は兵庫医科大学病院勤務時代に肥満外科外来の立ち上げに参画しており、肥満症に対する専門的な知識と経験をもとに診療を行っています。
「体重が増えてきた」「ダイエットが続かない」「健康診断で肥満を指摘された」などのお悩みがある方は、どうぞお気軽に芦屋まつおクリニックまでご相談ください。
無理のない食事療法を続けることが、将来の健康を守る第一歩になります。
気になることがあれば、ぜひ芦屋まつおクリニックにご相談ください。院長 松尾俊宏
