甲状腺の働きをわかりやすく解説 〜体調を左右する小さな臓器の大きな役割〜
- 2026年5月7日
- 代謝異常症・甲状腺・内分泌
みなさん、こんにちは。阪急芦屋川駅前の内科・糖尿病内科「芦屋まつおクリニック」、院長:松尾俊宏(まつおとしひろ)です。
このコラムコーナーでは、私の専門分野である糖尿病や内分泌代謝疾患、肥満症、そして訪問診療や終末期医療などについて、患者さんのお役に立てる情報を発信していきたいと考えています。
はじめに
私たちの体には、健康を保つためにさまざまな働きを担う臓器があります。その中でも、体調全体に大きな影響を与える重要な臓器のひとつが「甲状腺」です。
甲状腺は、首の前側にある小さな臓器ですが、ここから分泌されるホルモンは、体の代謝やエネルギーの使い方をコントロールする重要な役割を担っています。そのため、甲状腺の働きに異常が起こると、全身にさまざまな症状が現れることがあります。また、甲状腺の病気は特に女性に多いことでも知られています。
今回のコラムでは、甲状腺の基本的な役割や体調への影響、さらに甲状腺の病気が起こる原因について、わかりやすく解説していきたいと思います。
【甲状腺とはどのような臓器?】
首の前側にある小さな臓器
甲状腺は、首の前側、のどぼとけのすぐ下あたりに位置する臓器です。
蝶が羽を広げたような形をしており、左右に広がる構造をしています。
大きさは個人差がありますが、一般的には約15〜20g程度と小さく、普段はあまり意識されることのない臓器です。
しかし、この小さな臓器が分泌するホルモンは、体全体の働きを調整する重要な役割を持っています。
【甲状腺ホルモンを分泌する臓器】
甲状腺では、主に次の2つのホルモンが分泌されています。
・サイロキシン(T4)
・トリヨードサイロニン(T3)
これらは総称して「甲状腺ホルモン」と呼ばれます。
甲状腺ホルモンは、体内のさまざまな細胞に働きかけ、エネルギーの使い方や代謝のスピードを調整しています。
そのため、甲状腺ホルモンの量が増えすぎたり、逆に不足したりすると、体調にさまざまな変化が起こります。
【甲状腺の働き】
体の「代謝」をコントロールする
甲状腺ホルモンの最も重要な役割は、体の代謝を調整することです。
代謝とは、食べ物から得たエネルギーを体の活動に利用する仕組みのことを指します。
甲状腺ホルモンは、この代謝のスピードを調整することで、体の活動を支えています。
具体的には次のような働きがあります。
・エネルギー代謝の調整
・体温の維持
・心臓の働きの調整
・筋肉の活動の調整
・脳の働きのサポート
このように、甲状腺ホルモンは体のさまざまな臓器に影響を与える重要なホルモンなのです。
【成長や発達にも関係する】
甲状腺ホルモンは、子どもの成長や発達にも大きく関係しています。
特に重要なのが、
・身体の成長
・脳や神経の発達
です。そのため、乳児や小児の時期に甲状腺ホルモンが不足すると、発育や発達に影響を与える可能性があります。
【甲状腺はどのように体調を左右するのか】
①ホルモンが多すぎる場合
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、体の代謝が必要以上に高くなります。
この状態は甲状腺機能亢進症と呼ばれます。
主な症状としては、
・動悸
・手の震え
・汗が多い
・暑がり
・体重減少
・疲れやすい
・イライラしやすい
などが挙げられます。代表的な病気としてはバセドウ病があります。
②ホルモンが不足する場合
一方で、甲状腺ホルモンが不足すると、体の代謝が低下します。
これを甲状腺機能低下症といいます。
主な症状には次のようなものがあります。
・強い疲労感
・体重増加
・寒がり
・むくみ
・便秘
・皮膚の乾燥
・集中力の低下
代表的な病気としては「橋本病(慢性甲状腺炎)」があります。
このように、甲状腺ホルモンのバランスが崩れると、体調全体に影響が及ぶのです。
【甲状腺の病気になるのはどんなとき?】
甲状腺の病気の原因はさまざまですが、多くの場合は自己免疫の異常が関係していると考えられています。
自己免疫とは、本来は体を守るはずの免疫が、誤って自分の体の組織を攻撃してしまう状態のことです。
甲状腺の病気では、免疫が甲状腺を刺激したり破壊したりすることで、ホルモンのバランスが崩れてしまいます。
また、発症には次のような要因が関係していると考えられています。
・遺伝的体質
・強いストレス
・妊娠や出産
・ホルモンバランスの変化
・環境要因
これらの要因が重なり合うことで、甲状腺の病気が発症すると考えられています。
【甲状腺の病気はなぜ女性に多い?】
甲状腺の病気は、男性よりも女性に多いことが知られています。
例えば橋本病やバセドウ病は、女性の患者が男性の数倍にのぼるといわれています。
その理由として、いくつかの要因が考えられています。
①女性ホルモンの影響
女性ホルモンは免疫機能に影響を与えることが知られています。
そのため、女性は自己免疫疾患を発症しやすい傾向があります。
甲状腺の病気の多くは自己免疫が関係しているため、女性に多いと考えられています。
②妊娠・出産による体の変化
妊娠や出産の時期には、体内のホルモンバランスが大きく変化します。この変化がきっかけとなり、甲状腺の病気が発症することもあります。
また、産後には免疫の働きが変化するため、甲状腺炎が起こることもあります。
③ホルモン環境の影響
女性は、
・月経
・妊娠出産
・更年期
など、ライフステージによってホルモン環境が大きく変化します。
このようなホルモンの変化が、甲状腺の働きに影響を与える可能性があります。
甲状腺は首の前側にある小さな臓器ですが、体の代謝やエネルギーの使い方を調整する重要な役割を担っています。
甲状腺ホルモンのバランスが崩れると、
・動悸
・疲れやすさ
・体重の変化
・むくみ
・寒がりなど、
さまざまな体調の変化が現れることがあります。
また、甲状腺の病気は女性に多く、自己免疫やホルモンバランスの変化が関係していると考えられています。
当院では、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本内科学会総合内科専門医の資格を持つ医師が、甲状腺疾患の診療を行っています。
甲状腺の病気は、血液検査などによって比較的早期に発見できることも多く、適切な治療を行うことで症状の改善が期待できます。体調の変化が気になる場合は、早めに医療機関へ相談することが大切です。
気になる症状がある方は、芦屋まつおクリニックまでお気軽にご相談ください。 院長 松尾俊宏
